海外進出が進む中、大手企業だけでなく中小企業やスタートアップ企業なども海外でのビジネス拡大のため、現地に駐在員を置くケースが増えてきています。

そんな中、以前と比べると、海外拠点の責任者などの重要ポストとしてだけでなく、リサーチや営業担当者など、幅広い役割を担う人材が、海外に駐在員として派遣される傾向が高まっています。

しかし、その一方で企業側担当者の海外駐在員サポートに関するノウハウや経験、知識が不足しているために起こるトラブルも少なくなく、特に各国で必要となってくる対応が異なる「納税」については、後々多額の罰金が課せられる場合があり、注意が必要です。

特に、アジア諸国の中でも人件費が安く、生産コストが抑えられることもあって、多くの日系企業が進出している「ベトナム」は、外国人への個人所得の徴税が非常に厳しい国の一つです。

今回は、この個人所得税申告について、企業担当者が知っておくべきポイントについて、ベトナムの税務申告や駐在員の所得税申告支援などを行う専門家である「AAA Consulting」代表の今森さんにお話をお伺いします。

ベトナムの個人所得税は毎月申告・納税が必要

日本では、所得税の申告や納税に関して、「年に1度の確定申告」というイメージがあるかもしれません。しかしベトナムでは、個人所得税に関して様々な細かい取り決めがあります。例えば企業の場合だと、「事業規模」によって毎月もしくは四半期ごとの申告が必要になるほか、日本と同じように給与を受け取る個人に対する源泉徴収が毎月なされます。

一方、企業ではなく個人での申告の場合は、「所得内容」によって毎月、もしくは四半期ごとの申告が必要になるため、誤解が生じやすく注意が必要です。

さらに、四半期に一度は、日本で支払われている給与についても申告し、それに関する所得税を納税しなくてはいけません。

それだけでも複雑ですが、加えて毎月の源泉徴収額と四半期の納税額と合計したものと、年額との違いについて、確定申告を行う必要があるのです。

駐在員を赴任させている企業の担当者も、ベトナムでの個人所得税については、細かいルールを知らないことが多いので、事前にしっかりと確認することが重要です。

税務調査で外国人への厳しいチェック〜ペナルティーの可能性も〜

ベトナムでの個人所得税法では、原則としてベトナムで1日でも働いていれば納税の義務が発生します。

基本的にベトナムの個人所得税は、月次給与が日本円にして月額約5万円は免税になる関係で、給与水準が安い多くのベトナム人は、個人所得税の対象になりません。

なので結果的に、個人所得税収のうち6~8割は、ベトナム人よりも所得が高い外国人による納税分だと言われいて、外国人に対する課税は大変厳しくチェックされる傾向にあります。

近年、ベトナムでは企業への税務調査や確定申告の段階になって、現地駐在員の個人所得税について指摘を受けるケースが増えていて、最終的に、課せられたペナルティーを会社側が支払うことになってしまい、大きな損失になっています。

そのような事態を避けるためには、ベトナムへ海外赴任者を派遣する際、事前に税務申告に関する専門家などに相談した上で、現地のルールに基づいて税務申告をルールに基づいて手続きをするのが安心と言えます。

「居住者」か「非居住者」で適用される課税ルールが違う

企業の担当者が見落としてしまいがちなのが、非居住者に対する課税についてです。ベトナムでは、「居住者」か「非居住者」かで課税ルールは違いますが、ビジネスビザで入国した時点で、ベトナムでビジネスをしていることになるため、しっかりと申告を行わないと、後々調査が入り、罰金が課せられる可能性があります。

また、注意が必要なのが、ビジネスビザを取得するためには、受入企業からの「任命状」が必要であり、その任命した受け入れ企業は実質、保証人のような形になっています。

そのため、税金がなくても申告する必要があるベトナムで、もし無申告だった場合、最悪の場合、その受け入れ企業に罰金が課せられることになってしまいます。そして、その追徴金額は比較的高く設定されています。

様々な点でトラブルになる可能性を秘めているベトナムでの個人所得税申告について、ベトナムに駐在員を置く企業担当者は専門家に相談するなどして事前にしっかりとルールを確認し、トラブルを未然に防止することが大切です。



【AAA Consulting】
代表: 今森 教仁
本社:L17-11, 17F Vincom Center, 72 Le Thanh Ton, Ben Nghe Ward, District 1, Ho Chi Minh City, Vietnam
URL: https://www.aaaconsulting-vietnam.com/